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シュレディンガーの猫(vol.477/2013.12.14)

珍しく家の電話が鳴った。
出てみるとがんになる直前に
仕事を一緒にしたことがあるOさんという女性だった。

電話の向こうから遠慮しながらも
何か聞きだしたい雰囲気が伝わってきた。

彼女いわく
「元気なのね。
 再発とか転移とかは起きてないのね。
 ここ最近、あなたの夢を見たから
 心配になって」。

頭に血がどっとのぼった。
「それはあなた自身の不安の投影でしょ。
そっくりそのまま、その言葉をお返しするわよ!」
と怒鳴ってやろうかとも思ったが、
当時から悪気は無いけど、
人の気持ちを考えない人だったので
怒るエネルギーがもったいないと思って、
ぐっと気持ちを飲みこんで大人として応対した。

がんになると、この世に
もういないんじゃないかと思われるようだ。
うちの父も二つのがんを患い殆ど歩けなくなったので
狭いこの町では何度も
「亡くなったらしい」という噂が立つ。

ふと“シュレディンガーの猫”という物理学者が唱えた
思考実験を思い出した。

蓋のある箱の中に猫を一匹入れ、箱の中には放射性物質と、
ガイガーカウンターを1台、青酸ガスの発生装置を1台入れる。
もし箱の中にある放射性物質が放射線を出すと、
これをガイガーカウンターが感知して、
その先についた青酸ガスの発生装置が作動し、
青酸ガスを吸った猫は死ぬ。
しかし放射性物質から放射線が出なければ、
青酸ガスの発生装置は作動せず、猫は生き残る。
一定時間経過後、果たして猫は生きているか死んでいるか。

この箱の蓋を閉めてから1時間後に蓋を開けて観測したとき、
猫が生きている確率は50%、死んでいる確率も50%。
したがってこの猫は生きている状態と
死んでいる状態が1:1で重なりあっている、
と解釈しなければならない。

つまり誰かが確認するまで、猫は死んでいるし、生きている。

そしてこの私も電話をかけてきたOさんにとっては
私がたまたま外出していて電話が鳴ってもでなければ、
あるいは電話番号が変わってしまって連絡がつかなければ
死んでいることになっているのだ。

自分は十分に生きている、と言いたいために
こうして文章を書いたり、仕事をしたりして、
自分の存在を発信しているのかもしれない。

もうすぐがん記念日が近い。
私の人生の氷と熱の温度を確かめ、取り出して見てみたくなる。

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