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靴音のしない靴を履く理由(vol.498/2016.01.06)

「松の内に必ず行こう!」と思って
1月3日はある人のお見舞いに行っていた。

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それは創業期の頃、
そしてここ数年は再びちょこちょこと
学びに来てくれていた卒業生が
突如の急性骨髄性白血病で入院したから。

お見舞いに行く時に気を付けることは
香水をつけないとか、
華美な服装は避けるは誰でも知っているが
(メルマガ連載の頃に書いたのだけど)
盲点なのが実は靴。
とにかくコツコツと音を立てる靴を履いて
がん患者を訪問しないこと。

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その理由を「音がうるさいからでしょ」
と健康な人は言うが、
キャンサーサバイバーとしては
「わかってないなぁ」と心の中で思う。

正解はがん患者はナーバスになっているので
帰りにコツコツというお見舞いの人がたてる靴音が
遠ざかっていくことで
世の中から置いて行かれるような、
見捨てられたような気になるから。
これはなった者でないとわからない心境だろう。

この靴のルールは退院後数年の間所属していた
がん患者会での病棟訪問ボランティア研修でも習ったこと。

なんて思ってぺったんこの靴をひっぱり出して
千葉県のとある大学病院に向かった。

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病室の入り口で備え付けのゴムの手袋と
マスクをつけて入室したら
術前化学療法が始まっているので
彼は脱毛しかけた頭ではにかんでいた。

病室に持ち込んだパソコンで
自分の病状を色々と調べていて
楽観視できないことを淡々と話してくれた。

とにかく、この鉛色の世界、
ここから、はじまるんだよ。
私は小さく、
あなたも小さいけれど
この世の宿題が私たちはまだまだきっと残っていて、
未来は必ず光っているから。

なんていう話をしていた。

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帰る時に「靴音に気をつけよう」と思ったら
T君が入っているのは滅菌室なので
二重扉で外の音はほとんど聞こえない構造だった。
でも私は音がしないようにしながら
新年の光が降り注いでいる病院の廊下を
そっと歩いて帰った。

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